上司から部下に対して、先輩から後輩に対して、教員から学生に対して、指導するときに、みなさんはどんなことに気をつけていますか?
大学教員のわたしは、学生に対して『言い過ぎない』ことを注意しています。細かく指導し過ぎない、ということです。学生に手とり足とり細かいところまで指導することで、もちろん学生はわたしが指導した内容を身につけられると思います。以前はわたしもそのように指導しており、実際に学生はその場ではできるようになりました。しかし、こうした指導方法では、結局は学生に何も身につかないだけでなく、非常に重要なデメリットがあります。それは
- 学生が自分から調べたり考えたりしなくなる
- 学生のやる気がなくなる
- 学生のアイデアをつぶしてしまう
です。順に説明します。
学生が自分から調べたり考えたりしなくなる
細かく丁寧に学生に指導する方法で、そのときは学生も理解したつもりになり満足します。でも、そこで終わってしまうんです。学生は満足してしまうので、あとで自分からさらに深く調べようとすることもありません。いずれ、細かく丁寧に指導した内容でさえ、きれいさっぱり忘れてしまうでしょう。
やっぱり、自分で能動的に調べたり考えたりしたことでないと身につかないんです。細かく丁寧に指導する方法では、それを妨げてしまいます。
しかも、いったん手とり足とり学生に指導すると、学生はそれを当たり前のことと思い、次に何か分からないことがあったときにも、そのような指導を期待します。学生が自分から調べたり考えたりしなくなってしまうわけです。これは避けたい。
学生のやる気がなくなる
これも弊害です。『どうせ教えてくれるし待っていればいいや』と、学生のやる気がなくなって消極的になってしまうんです。大事なことは、教員がすべてのことを学生に教えることができるわけではない、ということです。教員が学生に指導できることなんてたかが知れています。むしろ分からないことのほうが多すぎます。最先端の研究をしているわけですしね。
なので、結局は分からないことを自分で調査しながら、自分で考えて研究を進めないといけないのです。いろいろと教員から学生に言い過ぎることは、このように進める学生のやる気をなくしてしまいます。
学生のアイデアをつぶしてしまう
これが一番大事かもしれません。教員が学生に言い過ぎると、学生自身のアイデアをつぶしてしまうんです。学生は、『先生の言ってることが正しいんだから、自分はこうやろうと思ったけど、止めよう』ってなってしまいます。教員の指導することがすべて正しいわけではありません。むしろ、教員のもっている知識・昔からの考え方は、最先端の研究をやる上でジャマになることもあります。学生のフレッシュな考え方・アイデアの方が優れているのです。
このように、いろいろと言い過ぎることで学生のアイデアを潰すことはやめましょう。
まとめ
- 学生が自分から調べたり考えたりしなくなる
- 学生のやる気がなくなる
- 学生のアイデアをつぶしてしまう
これら3つの弊害がありますので、みなさんも誰かに何かを教えるとき、言い過ぎることに注意しましょう。
何か聞かれたときも、『あそこのサイトにこんな情報があるよ』とか『あの本に書かれているよ』とか『自分だったらこうするけど、参考程度にとどめておいてね』とかでOKです。よく分からなかったら『ごめん、わたしもよくわからないや』でもいいんですよ。学生がそれを身につけるまでには少し時間がかかるかもしれませんが、上の3つの弊害からは回避できます。
こんなことしていると学生からはあまり感謝されません。まあ、学生のためを思って忍びましょう。
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